お金貯めて三日泊まるのが夏休み
週刊誌読んでやって来れば数珠繋ぎ
冷めたスープ放り投げるように飲まされて
二段ベッドでもあたいの夏休み
Summer Vacation  あたいのために
Summer Vacation  夏 翻れ

—中島みゆき「あたいの夏休み」

2010年12月18日土曜日

Orange Tart

日本にいたときもそれなりに料理は好きだったのだけれど、アメリカに来て一人暮らしをはじめてしみじみと料理のセラピー効果を実感するのは、こうやってペーパーから解放されるとまずなにがしたいって、ケーキが焼きたいのだな。

サンクスギビングの時にはピーカンタルトを焼いて、それもわりに上出来だったのだけど、昨日は深夜に思い立ってオレンジタルトを焼いてみた。オレンジの甘煮を作って、アーモンドクリームの中にオレンジの皮のすりおろしとラムを入れて焼いたらこれがおいしかった。

しかし惜しむらくは本来ラムの代わりにいれるべきコアントローがこちらではめさくさ高いこと(一瓶$50だよ、一週間の食費が飛ぶよ)、それからアーモンドプードルがいまいち粗いのか、生地をのばすときにあり得ないくらい崩落すること。アーモンドプードルを探すときもけっこう苦労して、almond powderはどこかと聞いても、なんだそりゃ知らないよ、と店員に困られた。結局こちらではalmond mealないしはalmond flourとして売っているということがわかったのだけど、どうもしっとり感が足りないんだよね。しかしMartha Stuwartのレシピなどを見るとどうやらこちらではタルトの生地にはアーモンドプードルは使わないようで、しかも全部フードプロセッサーでがんがん混ぜる様子。フードプロセッサーに関しては、こっちはCuisinartの本場ということで日本の半額以下なのですでに入手済みだから、今度はアメリカレシピをおそるおそる試してみる予定。ちなみにお菓子の基本、発酵バターはEuropean butterないしcultured butterの名称で売られていて、Wholefoodsではだいたい$5くらいで手に入るので、これも日本よりはお得感あり。日本だと1000円くらいしちゃうからね。

そんなわけできれいなタルトが焼けたとドヤ顔で彼に報告したら、それなにと困惑していたのでタルトタルトあまくて美味しいタルトと連呼していたら、あ、tartか、とようやく理解してくれた。なにが困るって日本でカタカナ語として慣れ親しんでいた単語はLとRの区別がないのでわたしが日本語のタルトを英語風に発音するとtaltになってしまうのである。カタカナ表記すると英語のタルトはタートに近い。ついでにもう一個こまったのはキューブリック。Cube lick?なに舐めるの?みたいな感じでまた困惑していたのでほら映画監督、Crockwork Orangeの、と説明したら、あ、Kubrickか、と納得していた。カタカナ表記するとクーブリックに近い。LとRの発音の区別は彼の苦心の成果でどうやら無事にできるようになったのだが(ちなみに彼の親は語学教師だった上、本人もドイツ育ちなので、外国語教育に大変熱心で、ありがたいことに事あるごとにいろんな例題を出してくれる。Are you allowed to use the public library?とか)、カタカナで記憶していてスペルのあやふやな単語というのはいまだに鬼門。あとliterature、LとRの区別をちゃんとつけようと発音するといつも舌がもつれるんですけど、とぼやいたら、それはletter+tureで発音すればいいんだよ、と教わった。なるへそ。

                                                                             * * *

[基本のアーモンドクリーム(クレーム・ダマンド)のレシピ]
☆無塩バター 75g
☆グラニュー糖 75g
☆卵 65g
☆アーモンドパウダー 75g
☆ラム 大さじ1.5

①バターは室温に戻して柔らかくしておく(薄く切って温かいところに置いておくと戻りが早い)。
②ボールにバターを入れ、泡立て器でクリーム状になるまで練り混ぜる。マヨネーズみたいになる。砂糖を一気に加え、さらに泡立て器で白っぽくなるまですり混ぜる。
③よく溶いた卵を1/6ほど残して少しずつ加えては混ぜる。一気にいれると分離する。
④ふるったアーモンドパウダー(アメリカのアーモンドミールは粗いのでうまくふるえなくてちょっと困るが、めげずに根気よくふるう)を加え、ざっと混ぜ、さらにラム、残りの卵を加えて混ぜる。混ぜすぎないこと。

上に載せるものによってラムの代わりに香りのいいリキュールをいれてもいいし、今回のようにオレンジの皮をすりおろしたものや、ナッツ(ピスタチオなど)、ごま、ココナツパウダーなどを混ぜ合わせても風味がよいのでおすすめです。

[オレンジの甘煮のレシピ]
☆無農薬オレンジ 2つ
☆グラニュー糖 50g
☆水 100cc
☆ラム(コアントロー)15cc

①オレンジは皮を粗塩でこすり、その後水でよく洗い、ちゃんと乾かす。ひとつは皮をすりおろして(クリームに混ぜ込む分)ジュースを絞っておく。もうひとつは3mm厚さにスライス。
②水とグラニュー糖を小鍋にかけて沸騰させる。
③スライスしたオレンジを投入してふたたび煮立ったら弱火でことこと15分。そのまま冷まして、タルトを焼く時に水気をペーパータオルで拭き取って、クリームの上に載せて焼く。
④小鍋に残ったシロップにしぼったオレンジ果汁、リキュールをいれてことこと。とろりとするまで煮詰めたら冷ましておく。
⑤焼き上がったタルトにあついうちに刷毛で④を塗る。ぜんぶ塗ると多いかな、と思ったら加減する。冷めてからもう一度塗るときらきら度が増す。だいたいのアーモンドクリーム系のタルトにいえることだが、冷蔵庫で一晩ひやすとより美味しい。