お金貯めて三日泊まるのが夏休み
週刊誌読んでやって来れば数珠繋ぎ
冷めたスープ放り投げるように飲まされて
二段ベッドでもあたいの夏休み
Summer Vacation  あたいのために
Summer Vacation  夏 翻れ

—中島みゆき「あたいの夏休み」

2010年10月30日土曜日

あたいのHalloween

アメリカ人はハロウィンに本気だ。全力投球だ。わたしの初ハロウィンはDrag Partyであった。みんな(特にMFAの人々)すごいことになっていた。そんなわけでわたしもDrag Kingデビューしてみた。今回気づいたのはあごひげとか口ひげとかがいかに安心感を与えるかということで、宴の途中汗かいて口ひげがなくなったら去勢されたようで急に心細くなり、その後ずっとあごひげを触っていた。ようやく男子のあのジェスチャーの意味がわかった。フロイトはあながち間違ってないよね、やっぱり。

2010年10月15日金曜日

canker sore

アメリカに来たらタバコなんて吸えないだろうなと思っていたのだが、どっこいここは南部。LSUの喫煙率は東大の3倍くらい。いや5倍かな。10mごとに灰皿がある。というかゴミ箱の上がどれも灰皿になっている。お値段は4ドルから5ドルと日本よりややお高めだが、それでもみんなけっこうパカパカ吸っている。

とはいえわたしも自分の身体の弱さはよくよく知っているので、調子に乗って釣られタバコをしないように肝に銘じている。幸いこっちはニコレットが安い。だいたい日本の3分の1くらいの値段かな。100ピースで30ドルくらい(日本だと1ピースだいたい100円)。アマゾンなんかで頼めるのだが、「定期購入の勧め」みたいなのまである。ニコレットもいつかはやめなければという感覚がなくなる。

が、やはりそろそろニコレットもなんとかしなきゃな、と思うのはやはり口内炎が出来た時である。わたしはよくものを食べるとき勢いあまって口の中を噛んでしまうのだけれど、ニコレットを噛んでいると確実に口内炎がひどい。今も久々の口内炎に苦しめられているのだけれど、友人に愚痴ったら写真のKANKA(口内炎は英語でcanker soreというのでその音をとってキャンカという。小林製薬的なネーミングは万国共通なのだね)という薬を買ってきてくれた。蜂蜜みたいなテクスチャーの塗り薬なんだが、これがまぁ痛みを見事に殺す。塗った一瞬後には口の感覚がなくなる。治療効果はおそらくない。いやしかしほんとにアメリカっぽい薬である(アメリカ人は保険の関係で日本人より病院にいかないからというのもあるのだろうか、市販薬がけっこう強烈)。身体にいいわけはないのだが、それでも帰国の際には10本くらいは買って帰りたいものである。あーなにも感じない。そしてまたニコレットを噛み締めるのである。とほほ。


2010年10月13日水曜日

HipなMFA NerdなPhD

アメリカの英文科のおもしろいところのひとつに、多くの大学院でMA(修士)やPhD(博士)の他にMFAと呼ばれる学位を出していることがある。

MFAとはMaster of Fine Artsの略で、英文科でMFAというとクリエイティブライティングを専門とする人たちの学位を指す。よって英文科には、詩、小説、スクリーンプレイなどの創作を専門にするMFAの学生と、英米及び英語圏文化文学研究を専門にするPhDの学生がいることになる。他の大学のシステムはわからないのだが、LSUではPhDの学生もクリエイティブライティングの授業をとれるし、MFAの学生も批評の授業がとれるので、同じクラスにPhDとMFAが混在していることがままある。というかほとんど全部の授業がそうである。

MFAの学生は一見しただけで区別がつく。MFAとはhipsterの異称なのである。写真はうちのMFAの人々ではなくネットに落ちていたhipsterの写真なのだが、この三人が三人ともクラスにいておかしくない。ぴたぴたのスキニーデニムにコンバース、でかいフレームのだてメガネないしサングラス、スカーフ、アメアパ的ネオンカラーのVネックなどがその目印になる。で、みんないかにも不健康そうな顔色をして週末はパーティに興じてはいるのだけれども実は健康マニアで食べ物は主にオーガニック(ベジタリアン率が高い)、名前を聞いた事のないようなインディーロックを支持して、facebook, twitter, myspaceその他social networに常に繋がり1000枚単位の写真をアップしている、というのがいわゆるカリカチュアライズされたhipster 像なのだけれども、MFAの学生は多かれ少なかれこうした記述に当てはまるところがある。

MFAの学生を揶揄するためにこれを書いているわけでは全くないのだけれど(実際みんないい人なのである)、hipsterというのはやはり現象として興味深い。Hipsterというのは一言でいえば中上流階級の若者のカウンターカルチャー「的」身振りである。40年代に初めて使われてBeatと結びつけられていたこの言葉は、90年代後に復活をとげて今に至るらしいのだけれど、現代におけるhipsterというのはポストモダン的エートスをその身にいっぱいに浴びた、それはもう引用につぐ引用でできたコラージュ、ということのようだ。見かけとしてはまごうかたなき「カウンターカルチャー」なのだけれど、その実、西洋文明批判という旧来のカウンターカルチャーの精神を(無意識に)換骨奪胎したというのがポイントで、実は物質文明を批判しながら徹頭徹尾消費文化に貫かれていて、もともとの文脈からあらゆるカウンターカルチャー的要素を切り取ってそれを商品として消費して身にまとう、という頽廃性がなによりもその基盤にあるようだ。ちなみに上の写真の引用もとのブログの記事("How Do I Know If I'm a Hipster?")はなかなかおもしろかった(http://www.antiquiet.com/features/editorials/2008/11/how-do-i-know-if-im-a-hipster/)。

繰り返すようだけどhipster的MFAの人々をバカにしているわけでは全然ないし、MFAという制度に疑問を抱いているわけでもない。MFAというカテゴリを設けて作家達に教職を与え、また絶滅危惧種である文学を保護し育てようとするアメリカの大学院の試みは立派だし、それ自体ある意味文学的な営みであるとさえ思う。が、たとえば面白かったのはこの間のTheoryのクラスで発表したMFA女子のペーパーで、彼女は「"lowbrow"と"highbrow"の垣根はなくなっているとしばしば言われているけれど、そんなのは根本的には"lowbrow"をアカデミズムの制度に取り込もうとする"highbrow"側の欺瞞にすぎない」と言うような趣旨の事を述べ、ちなみにこのペーパーを書くきっかけになったのは、New Orleansの街角詩人と意気投合しかけたのだがLSUでMFAをやっていると言った瞬間に嘲笑された経験だ、と言っていたことだったりする。Hipsterも楽ではないのだ。

なおこの間American EagleでJegginsというジーンズとレギンスの間の子のようなパンツを買って履いていたらPhDの学生に「hipsterだね」とからかわれ、ニコレットを貪っていたら他のPhDの学生に「禁煙たいへんでしょ、なんかほら、ここだとみんな煙草吸うじゃない…MFAの人とか?」と心配された。我々nerdなPhDとhipなMFAの溝はかくも大きい。