お金貯めて三日泊まるのが夏休み
週刊誌読んでやって来れば数珠繋ぎ
冷めたスープ放り投げるように飲まされて
二段ベッドでもあたいの夏休み
Summer Vacation  あたいのために
Summer Vacation  夏 翻れ

—中島みゆき「あたいの夏休み」

2010年11月25日木曜日

Thanksgiving

Nerdの要件のひとつに世界を己の肉体を以てではなく本を通して知るというのがあるわけだけれども、そろそろ大学生をはじめて10年になる真性nerdであるわたくし、生身の世界に驚かされることがしばしばなのだが、アメリカに来てからはほんと、明治の学生が留学したような感じで驚かされることがけっこうある。

Thanksgivingもそのひとつで、こっちに来る前からThanksgivingのことは一応知ってはいたのだが、よもやこんな盛大な国を挙げての祭りだとは知らなんだ。この時期PhDの学生はみんな締め切りをかかえているわけだし(しかもTAやってるわけだからundergradのペーパーのgradingもあるわけだ)このクソ忙しい時期にThanksgivingだ?なにを寝言を言ってるんだ、くらいの勢いかと思ったら、どっこいThanksgivingというのはクリスマスに次ぐ大行事らしく、みんなそれはもう精魂込めて祭るのであった。

Thanksgivingは日本のお正月みたいな位置づけにあるらしく、基本的には家族で祝うものみたいなのだけど、大学院生の多くは全米各所から来ているのでたった3日くらいの休みで帰るわけにもいかず(とはいえわたしの友人の半数は帰っているか中間地点で親戚と落ち合ったりしている)、町に残った者が集まって持ち寄りパーティ(potluck)をするということ。日本の正月同様Thanksgivingは食祭なので(ちなみに発祥は入植当初、農作物が育たなくて食べ物がなかったpilgrimにNative Americanが食べ物をあげたのに感謝をするということだったらしい)、Turky (ローストが基本なのだがここは深南部、チーズケーキまで揚げるのでもちろん七面鳥も深鍋で1時間くらい揚げたりする)だのSweet Potato Casserol に始まるさまざまなCasserolだの、伝統料理がずらりと並ぶ。

鼻血を吹くくらい忙しいわたしは(徹夜でペーパー書いてるときにほんとに吹いた)当たり前に祭らない気満々だったのだが、Thanksgivingを祝わないなんてお前はそれでも人間か、とまで言われたのでけっきょくに出席することになり、そのためにpecan pie(わたしはパイよりタルト派なのでタルトにしたんだけど)まで焼いた。ていうか、招待のメールに食卓に並ぶべき食べ物のリストが書いてあって、そこに自分の名前を記入してみんなが持って行く、ってどんだけ気合い入ってるの。

で、Thanksgivingというのは毎年11月最終週の木曜日に行われるのだが、その翌日がまたBlack Fridayと呼ばれる大行事のようである。なにがBlackかって、その日からクリスマスに向けて大規模なショッピングシーズンが始まるので、その日は夜明け前のまだ空が黒々とした時間帯から店がオープンして、一大セールを繰り広げるんだって。もちろん人々はThanksgivingの夜が更けたころぐらいから店の前に並ぶ…うん、やっぱり日本のお正月の福袋みたいなもんかね。

そんなわけでThanksgivingに行ってきたのだけれど、どれもこれも…おいしかった。アメリカの飯がまずいというのはアメリカに留学した100人90人くらいが言うことだと思うので、わたしの舌がよほど貧しいのかとも思うのだけれど、ひとつには外食(特にアメリカ料理及びアメリカナイズされた中華料理など)、これはあまりいただけない。なんかぜんぶ同じ味がする。おかげで外食の機会がドラスティックに減った。でも、結局のところ手料理というのはやはり別物なわけで、なんだか知らないんだがおいしいし、日本人のpotluckのときと変わらないくらいのクオリティだと思う。というかむしろパーティ慣れしているので大皿料理を作るのがうまい。そんなわけでここ何日かCampbellのスープ(くどいようだがここは深南部、Campbellがchiken gumboを出していて、これがけっこうおいしい。お米も入ってて雑炊みたい)とチョコレートでしのぎ、締め切り前の2日で体重が2kg減っていたわたしの身体は、三皿くらいおかわりしたアメリカ手作りごはんのおかげでふたたび脂肪を取り戻したのでした。Happy Thanksgiving!