長らく会えない(8月の頭にわたしがNew Mexicoに行くことになっているので6月と7月のまる2ヶ月だ)ということもあって、学期が終わってからPJの出発前のおよそ3週間はほぼ毎日のように会っていたので、しばらくは真面目に机に向かう時間もなかった(いやカウチやビーチでで本読んだりはしたけどさ)。しかし今月18日にはわたしもBRを出てLAで一週間を友人と過ごし、その後東京で三週間滞在すると考えると、PJの出発からわたしの出発までのこの二週間は勉強に集中できる貴重な時間、ということになるので、ここ最近は久々に勉強に精を出していた。実はうれしいことに、先学期は3つとっていた授業で出したペーパーがどれも好評で、それぞれ教授から出版に向けての書き直しを勧められたのだった。どのペーパーも楽しんで書けたものだったので本当に本当にうれしかったのだけれど、3本すべて書き直すわけにはいかないので今は一番気に入っている、Sexualityの授業で書いたWilla CatherのThe Professor's Houseに関するペーパーを鋭意書き直し中である。それぞれのペーパーについてと、それから新しく始めたblog「あたいの読書録」(といってもほとんどノート代わりの備忘録なので他のひとが読んでもちっともおもしろくないと思う)についてもいつか書きたいのだけど、長くなりそうなので今日は別の話。
そんなわけで6月3日から昨日まで毎日、朝起きてごはんをつくって、図書館かカフェに行ってリーディングをして、帰ってごはんを食べてライティングをして、ステッパーでyoutubeみながら20分くらいエクササイズをしてお風呂にはいって寝る、という、ある意味ではわたしにとって夢のような生活を毎日していたのだけど、やはりここは南部、そうした生活をずっと続けるのは許されないというか、「なにやってんだよ」ということになる。金曜日に喫茶店で読書していたら友人に声をかけられ、「もうBRにいないんだと思ってたのに、勉強してるの。夏休みなのにえらいなぁ、PJがいなくてさみしいんじゃないの?」みたいなことを言われたので、うーんそうだね、たしかにちょっとさみしいかも、と笑っていったら案の定というかなんというか、週末の三夜連続でパーティあるいはごはんの誘いがあったので、最初は断っていたのだが根負けして日曜の夜、少し息抜きに夕ご飯を友人達と食べに行った。
Truckstopに行ったことある?という風に聞かれて、なにそれ、という感じだったのだけれど、その名のとおりtruck stopとは長距離トラックの休憩所みたいなもので、アメリカ中のインターステートの周りに散在する、「シャワーの浴びられるレストラン」みたいなところである(ベッドがある場合もあるが、トラックドライバーは大抵自分のトラックで寝るらしい)。60年代くらいから70年代にかけてトラックは昔のカウボーイみたいなアメリカン・スピリットのロマンを担うことになったらしく、いまでもトラック野郎というのは現代のカウボーイと呼ばれることもあるらしい。そんなわけでtruckstopというのはある意味ではアメリカ魂のふるさととも言えるらしく、そして南部の場合、実は一番おいしい南部料理はtruckstopで食べられる、とまで言われることがあるほど、料理がわりと充実している。実際Port Allenという、Baton Rougeからミシシッピを渡って10分くらいの町にあるCash's Casinoという店のチキンカツレツ(なんて言うんだったけなぁ、チキンを叩いて薄ーくして、衣をつけてカリカリに揚げてグレイヴィーソースをかけたもの)とred beans and riceは涙もののうまさだった。
と、そこまではよかったのだが、その後気づいたら友人が作ったMint jurep(南部名物のカクテルでモヒートMojitみたいなものなのだが、Cubaの発祥Mojitはライムジュースにシロップとミント、炭酸でホワイトラムを割ったもので、Mint jurepは炭酸とラム抜きのバーボン入り)をいい気分で飲んでいた。もともとほとんどお酒は飲めないし、周りの人々もそれはよく知っているので(暑いのに耐えられる体質と同様、いつもの「そうか…アジアの遺伝子か」というジョークまじりの粗い理解で受け止められている)ほとんどvirgin mojito(virginで作ってくれ、というのはアルコール分を入れないでくれ、ということなのだ)に近い感じだったのだけど、久々に飲んだからというのと、ここ最近あまりに健康的な生活をしすぎていてチキンカツレツの脂にやられていたからか、ほとんどあり得ないくらいにべろんべろんになってしまった。なにが恐ろしいってどんなに酔っても英語でしゃべらなければいけないので、なんか軽く地獄をみた(それでもコミュニケーションがとれていたことがありがたくてうれし泣きをして友人が驚いていた。あとで聞いたら、Kristevaにおける、言語が喪失の代替となる論がいかに正しいかがこういう言語を失いそうな状況でよくわかる、とかわけわかんないことを言っていたらしい。一生の恥である)。現在翌日の午後4時を回っているがいまだに二日酔いが抜けない。そんなわけでこのポストは言葉がろくに出てこない状態から勉強モードに戻るためのブリッジだったのである。
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さて、なんとかこの状況を脱するために、二日酔いに優しいスープを作った。これまた料理好きのHのレシピをすこしアレンジしたものなのだけど、単なるスープといって侮ってはいけない。ほ ん と う に おいしいのだ。アメリカはスープの国なので、キャンベルをはじめ、いろいろなメーカーが出来合いのスープを缶やパックで出していて、tomato basil soupは中でもわたしのお気に入りなのだけれど、この手作りのtomato basil cream soupはやはり段違いのうまさである。[Tomato basil cream soupのレシピ]
☆トマト 4-5個 (こちらではroman tomatoという細長くて水分の少なめのトマトがあるのでそれを3つと余っていたミニトマトを使った。普通のトマトでも出来るとおもうのだけど、あまりじゅくじゅくに熟していないトマトのほうがよいと思う)☆たまねぎ 1個
☆にんにく 4かけ
☆バジル 1パック (先日行ったfarmer's marketのバジルが余っていたのでそれを使った。日本同様バジルはけっこう高いので、もしなければないでトマトクリームスープにしても十分美味しい。あるいはドライバジルを野菜をローストするときにハーブと一緒に混ぜ込んでも)
☆ベジタブルブロス 2.5カップ (ブロスがなければ野菜スープのもとを水に溶かしても。チキンスープやビーフブイヨンでも可。要はスープのベースならばなんでも可。)
☆生クリーム 100cc (あったほうがトマトの酸味が丸くなって好きだけれど、なくても可。また、牛乳とのhalf and half、あるいは牛乳でも可)
☆ハーブミックス (Herb de Provanceというのを使っているけれど、ドライハーブならほぼなんでもいい。わたしはローズマリーを大目にいれた)
☆オリーブオイル 大1から2(野菜にまんべんなく絡まる量)
☆塩胡椒 小1から2(ブロスの塩加減による)
①トマトは大きめの櫛切り(ミニトマトは二つ割)、玉ねぎは大きめの半月切り、にんにくは二つ割、バジルは大きめにちぎって、オリーブオイルをよく絡め(コーティングするようにまんべんなく行き渡らせる)、さらに塩こしょう、ドライハーブを全体にまぶす。
②①を耐熱皿(わたしは深めのバットを使っている)に入れて200℃に熱したオーブンで約30分から40分。途中で色を確認しながら、ちょっと焦げ目がついたかな、くらいのところで火を止めてオーブンから出す。
③鍋にブロスを湧かす。
④②をフードプロセッサーまたはミキサーにかけて滑らかなピューレにする。30秒くらい?
⑤ブロスに④を加え、ゆっくりかき混ぜる。均一になるまで。
⑥火を弱め(消してもいい)、クリームをゆっくり加え、さらに混ぜる。
⑦好みでざるなどで漉せばさらに滑らかになるが、濾さなくてもこれでもう食べられる。ドライあるいはフレッシュバジルを浮き実にして召し上がれ(写真はぐらぐらの状態でとったので浮き実などはもちろん忘れている)。ちなみに冷やしてもおいしい。
二日酔いの乾いた口(cotton mouthという。綿を食べたみたいに口がカラカラだから。アルコールだけじゃなくてドラッグや極度の不安による口の乾きもこう呼ぶ)に沁みるレシピである。ポイントは野菜を炒めるのではなくてオーブンでローストすること。高温でローストした野菜のうまみというのはなににも代え難い調味料だ。ちなみに日本だとオーブン料理はなぜか敷居が高い印象だと思うのだけれど、アメリカは冷凍食品文化なこともあって、どんなに料理をしない子でもオーブンは電子レンジ感覚で使う。そしてどんな家にも電子レンジはなくてもオーブンはデフォルトでついてくる。さて、料理の後でこれを書いていたらだいぶ回復したのでこれから図書館に行って本借りてこなきゃ…ああ、一生の不覚。