こちらに来る前にはリースというのはクリスマスの為に飾るものだと思っていたのだけれど、アメリカの玄関というのは年がら年中ではないにしろ、けっこう驚くほどの頻度でwreathで飾られている。1月中頃、ホリデイシーズンを過ぎてもまだあちこちの家の玄関先に色とりどりのリースが掛かっているので、ああこりゃ松飾りを外し忘れたようなもんなのかな、いかんいかん、福を逃がしますよ、と思っていたら、PJがよくリースの色を見てご覧なさい、と言う。紫、金、緑。あ、これはMardi Grasカラーじゃないか。ルイジアナではクリスマスとニューイヤーを過ぎると人々はMardi Grasの準備に忙しい。玄関先も当然Mardi Gras用のリースで飾らなければ気が済まないのだ。さてMardi Grasも終わって、じゃあいよいよリースを外す頃かしら、と思ったら、今度は家々の玄関先が明るい緑のリースで飾られてる。リースは元気に育った庭いっぱいのクローバーとともに南部の光に照り映えて、そう、三月のお祭り、St. Patrick's Dayの準備が始まっているのである。
3月17日にはアメリカ中の多くの大都市でパレードが行われているはずなのだけれど、実は普通南部の中小都市ではSt. Patrick's Dayはそこまでメジャーなお祭りではない。が、Baton RougeではMardi Grasの時と同様、爆音のダンスミュージックとともにフロートによるパレードが二時間も三時間も続く。なぜフランス・スペイン系の影響の強いルイジアナでこのアイルランド系のお祭りがこうも盛大に行われるかというと(ちなみにアイルランド系移民はBoston や New Yorkを初めとする東海岸に多い)、それはこのお祭りがカソリック由来のものだからなのである。Mardi Grasの時にも書いたけれど、ルイジアナはプロテスタント色の濃い南部で唯一ともいえるカソリック州。これがカソリックの特徴だと一般化するわけではけしてないけれど、わたしがこの地で触れたカソリックというのは、教義・典礼的には大変厳しいのだがそれを相殺するかのごとくひとびとの日々の生活は(とりわけプロテスタントのそれに比べ)めっぽう享楽的でかつ情熱的なのである(…やっぱりでもこれってカソリック全般に言えることなのではないかという疑いが頭をよぎるのは同じカソリック系の中南米およびイタリアの人々の性的おおらかさによるのだが)。St. Patrick's DayはMardi Grasの翌日のAsh Wednesdayから始まり四月の謝肉祭までの節制の日々、レントにあって唯一飲めや歌えやが公に許される日とあって、人々はまたこれでもかというほどに乱れ狂う(ちなみにそれなりにレントにまじめに取り組んでいる人たちもいるのだなと感じたのはAsh Wednesdayのその日、キャンパスを歩いていたら、いかにもソロリティの女の子らしいブロンドちゃんがiPhoneを片手に激怒していて、いったいどうしたのかと耳をそばだてたら、Ash Wednesdayに肉を食べるなんてほんとに信じらんない、わたしたちの関係を考え直したいわ、などと言っていたときだったのだが、まぁ実際、大抵のひとはほとんどレントなど気にしていなさそうだ。要は単に騒ぎたいんです)。
おそらくこれはMardi Grasを擁するルイジアナならではの現象なのだが、あいかわらずパレードではフロートの上の人々が緑色のビーズの雨を降らせる。ビーズだけではなく、ビール用の緑のコップや上の写真のようなパンツ、leprechaunと呼ばれるアイルランド民話に出てくるキャラクターをかたどった奇妙なマスコットなどが雨霰のごとく降ってくる。その中に身の丈60cmほどの兎のぬいぐるみがあり、これはパレードで約10体しかないというラッキーアイテムなのだけれど、ありがたいことにパレード最前列で友達と踊っていたらなぜかおじいちゃんがフロートから身を乗り出してわたしに手渡してくれたので、1歳の娘のいる友人にプレゼントした。パレードが終わる頃には左の写真のように緑のビーズで身動きがとれなくなり、周りのひとに手伝ってもらわないと抜けない始末であった。
論文採用のお祝いにとパレードルートの周りに住んでいるルイジアナネイティブの友人が大きな鉄鍋でジャンバラヤを作ってくれたので、みんなで乾杯した。が、パーティが始まって一時間も立つ頃にはみんなぐでんぐでん(なにしろアイルランドのお祭りだからということで半端ではない強さのお酒が振る舞われる。もちろんわたしは相変わらずビール一杯くらいしか飲めないので事なきを得たが、)で、気づけばホストである友人は数人の女子とベッドルームに消え、ありがとうを言ってPJと家路につこうと思ったら、ベッドルームの前までいったPJが、あ。これは。入っちゃだめだわ、すごいことになってる。と言っていたので、中で何が行われているかは恐ろしくてのぞけなかった。どんだけだい、と思いながらPJ宅まで歩いているとそこかしこでパーティミュージックの中、パトカーの音がこだましていた。全て真っ昼間に行われているのだからほんと、どんだけだよルイジアナ。
そんなわけでわたしもなにかパーティに緑色のものを持って行こうと、今回はピスタチオをベースにしたお菓子を二種類焼いてみた。いつものごとくタルト生地を余らせていたので、ひとつはピスタチオのタルト、それからもう一つはPJのお母さんのレシピによるピスタチオのクッキーである。実はタルトの方もお母さんレシピに想を得て、いつものアーモンドクリームにフードプロセッサーで粉にしたピスタチオとフェンネルシード、アーモンドエッセンスを混ぜただけなので、今回はクッキーのレシピだけ(タルトは写真のようにSt. Patrick's Dayのエンブレムであるshamrockをかたどって粉砂糖でデコレーションしてみた。四葉のほうが縁起がよかろうと思ったが実際にはクローバーの三つ葉がholy trinityを象徴しているそうなので、三つ葉が基本だそうです。ふむふむ。切るときれいな緑色です)。アメリカレシピだけにその大量のバターと砂糖の量に腰が引ける方もおられるかとは思いますが、大量に焼けるので日に1枚、2枚食べる分には問題はないはずです。お味のほうは太鼓判。ほんとうにおいしかったです。
☆発酵バター 250g
☆砂糖 250g
☆小麦粉 250g
☆ベーキングパウダー 小1
☆塩 小1/2
☆ピスタチオ 100g
☆たまご 1つ
☆アーモンドエッセンス 小2
☆ライムの皮をおろしたもの ライムひとつぶん
☆フェンネルシード 小2
①ピスタチオは飾り用少々を残してフードプロセッサーで細かい粉にする。
②オーブンは180℃に余熱。
③バターを室温に戻し、電動泡立て器でクリーム状にする。
④砂糖を③にまぜこみ、さらに電動泡立て器で滑らかなクリームになるまでまぜる。
⑤卵を4度にわけて④に加える。そのたびに電動泡立て器を使うこと。分離しないように。
⑥アーモンドエッセンス、ライムの皮、フェンネルシードをゴムベラで混ぜる。
⑦⑥に塩、小麦粉、ベーキングパウダーをふるいいれ、ゴムベラで粉っぽさがなくなるまでまぜる。
⑧ピスタチオの粉もさっくりとまぜこむ。
⑨天板にオーブンシートをしき、生地を2cmくらいのボールにしてのせ、手のひらで抑えて平たくする。飾りのピスタチオを乗せる。焼き上がると生地が広がるので生地と生地の間を最低1cmは空けること。わたしはこの分量で直系5cmくらいのクッキーが40枚強焼けたので、一度に天板に全てに乗せるのではなく、3, 4回にわけて焼く。
⑪10分くらい焼いて、うっすらと焼き色がついたらオーブンからだしてオーブンシートごとクッキークーラーにうつし、粗熱をとったら召し上がれ。しかし個人的には冷蔵庫で冷やしてからの方がフェンネルシードやピスタチオの香りがたっておいしかったです。
あいかわらずセブンティーズなルイジアナの人々はお祭りになると外でにこにこと煙草代わりにポットをたしなむのですが(違法なはずなんだけどなぁ…)、大麻というのは味覚をふくめいろんな感覚を強めるそうで、近所のおじさんやおばさんもわたしのクッキーとタルトを食べながら、ああおいしい、こんなにおいしいお菓子ははじめて!と言ってくれたので、どうかルイジアナの民の快楽に貪欲な罪深さを許してくださいと、抜けるような青空にお祈りした。
3月17日にはアメリカ中の多くの大都市でパレードが行われているはずなのだけれど、実は普通南部の中小都市ではSt. Patrick's Dayはそこまでメジャーなお祭りではない。が、Baton RougeではMardi Grasの時と同様、爆音のダンスミュージックとともにフロートによるパレードが二時間も三時間も続く。なぜフランス・スペイン系の影響の強いルイジアナでこのアイルランド系のお祭りがこうも盛大に行われるかというと(ちなみにアイルランド系移民はBoston や New Yorkを初めとする東海岸に多い)、それはこのお祭りがカソリック由来のものだからなのである。Mardi Grasの時にも書いたけれど、ルイジアナはプロテスタント色の濃い南部で唯一ともいえるカソリック州。これがカソリックの特徴だと一般化するわけではけしてないけれど、わたしがこの地で触れたカソリックというのは、教義・典礼的には大変厳しいのだがそれを相殺するかのごとくひとびとの日々の生活は(とりわけプロテスタントのそれに比べ)めっぽう享楽的でかつ情熱的なのである(…やっぱりでもこれってカソリック全般に言えることなのではないかという疑いが頭をよぎるのは同じカソリック系の中南米およびイタリアの人々の性的おおらかさによるのだが)。St. Patrick's DayはMardi Grasの翌日のAsh Wednesdayから始まり四月の謝肉祭までの節制の日々、レントにあって唯一飲めや歌えやが公に許される日とあって、人々はまたこれでもかというほどに乱れ狂う(ちなみにそれなりにレントにまじめに取り組んでいる人たちもいるのだなと感じたのはAsh Wednesdayのその日、キャンパスを歩いていたら、いかにもソロリティの女の子らしいブロンドちゃんがiPhoneを片手に激怒していて、いったいどうしたのかと耳をそばだてたら、Ash Wednesdayに肉を食べるなんてほんとに信じらんない、わたしたちの関係を考え直したいわ、などと言っていたときだったのだが、まぁ実際、大抵のひとはほとんどレントなど気にしていなさそうだ。要は単に騒ぎたいんです)。
おそらくこれはMardi Grasを擁するルイジアナならではの現象なのだが、あいかわらずパレードではフロートの上の人々が緑色のビーズの雨を降らせる。ビーズだけではなく、ビール用の緑のコップや上の写真のようなパンツ、leprechaunと呼ばれるアイルランド民話に出てくるキャラクターをかたどった奇妙なマスコットなどが雨霰のごとく降ってくる。その中に身の丈60cmほどの兎のぬいぐるみがあり、これはパレードで約10体しかないというラッキーアイテムなのだけれど、ありがたいことにパレード最前列で友達と踊っていたらなぜかおじいちゃんがフロートから身を乗り出してわたしに手渡してくれたので、1歳の娘のいる友人にプレゼントした。パレードが終わる頃には左の写真のように緑のビーズで身動きがとれなくなり、周りのひとに手伝ってもらわないと抜けない始末であった。
論文採用のお祝いにとパレードルートの周りに住んでいるルイジアナネイティブの友人が大きな鉄鍋でジャンバラヤを作ってくれたので、みんなで乾杯した。が、パーティが始まって一時間も立つ頃にはみんなぐでんぐでん(なにしろアイルランドのお祭りだからということで半端ではない強さのお酒が振る舞われる。もちろんわたしは相変わらずビール一杯くらいしか飲めないので事なきを得たが、)で、気づけばホストである友人は数人の女子とベッドルームに消え、ありがとうを言ってPJと家路につこうと思ったら、ベッドルームの前までいったPJが、あ。これは。入っちゃだめだわ、すごいことになってる。と言っていたので、中で何が行われているかは恐ろしくてのぞけなかった。どんだけだい、と思いながらPJ宅まで歩いているとそこかしこでパーティミュージックの中、パトカーの音がこだましていた。全て真っ昼間に行われているのだからほんと、どんだけだよルイジアナ。
[Pistachio Cookiesのレシピ]
☆発酵バター 250g
☆砂糖 250g
☆小麦粉 250g
☆ベーキングパウダー 小1
☆塩 小1/2
☆ピスタチオ 100g
☆たまご 1つ
☆アーモンドエッセンス 小2
☆ライムの皮をおろしたもの ライムひとつぶん
☆フェンネルシード 小2
①ピスタチオは飾り用少々を残してフードプロセッサーで細かい粉にする。
②オーブンは180℃に余熱。
③バターを室温に戻し、電動泡立て器でクリーム状にする。
④砂糖を③にまぜこみ、さらに電動泡立て器で滑らかなクリームになるまでまぜる。
⑤卵を4度にわけて④に加える。そのたびに電動泡立て器を使うこと。分離しないように。
⑥アーモンドエッセンス、ライムの皮、フェンネルシードをゴムベラで混ぜる。
⑦⑥に塩、小麦粉、ベーキングパウダーをふるいいれ、ゴムベラで粉っぽさがなくなるまでまぜる。
⑧ピスタチオの粉もさっくりとまぜこむ。
⑨天板にオーブンシートをしき、生地を2cmくらいのボールにしてのせ、手のひらで抑えて平たくする。飾りのピスタチオを乗せる。焼き上がると生地が広がるので生地と生地の間を最低1cmは空けること。わたしはこの分量で直系5cmくらいのクッキーが40枚強焼けたので、一度に天板に全てに乗せるのではなく、3, 4回にわけて焼く。
⑪10分くらい焼いて、うっすらと焼き色がついたらオーブンからだしてオーブンシートごとクッキークーラーにうつし、粗熱をとったら召し上がれ。しかし個人的には冷蔵庫で冷やしてからの方がフェンネルシードやピスタチオの香りがたっておいしかったです。
あいかわらずセブンティーズなルイジアナの人々はお祭りになると外でにこにこと煙草代わりにポットをたしなむのですが(違法なはずなんだけどなぁ…)、大麻というのは味覚をふくめいろんな感覚を強めるそうで、近所のおじさんやおばさんもわたしのクッキーとタルトを食べながら、ああおいしい、こんなにおいしいお菓子ははじめて!と言ってくれたので、どうかルイジアナの民の快楽に貪欲な罪深さを許してくださいと、抜けるような青空にお祈りした。