お金貯めて三日泊まるのが夏休み
週刊誌読んでやって来れば数珠繋ぎ
冷めたスープ放り投げるように飲まされて
二段ベッドでもあたいの夏休み
Summer Vacation  あたいのために
Summer Vacation  夏 翻れ

—中島みゆき「あたいの夏休み」

2010年8月15日日曜日

New Orleans, Louisiana 2


さて、New Orleansについてはまだまだいくらでも話すことがある。

日本にいるときにガイドブックを見て、New Orleansはフランス統治時代の面影を濃く残す街で、建物のバルコニーにはiron laceと呼ばれる美しい鉄細工が施され、中庭には花が咲き溢れています、というような記述を頭に入れていた。なるほど写真はディズニーランドの玄関から入って最初の街並みたいな感じで、ほんとに美しい。

実際に行ってみて、それが裏切られたというわけではない。ホテルや街並は乙女心をくすぐるヨーロピアンな装飾に溢れている。が、New Orleansという街の本質はそこにはない。この街を端的に表す形容詞は「猥雑」である。良くも悪くも。

French Quaterというのが観光のメッカなわけで、ガイドブックもここに多くの頁を割くわけだけれども、行ってみるとこれがほんとうに小さい。縦600m、横1.2kmくらいの四角形なので、すぐに歩けてしまう。そのFrench Quaterの目抜き通りはBurbon Streetというところで、ここにはジャズクラブがひしめき合っています、というのがガイドブックの説明だったのだが、それよりなによりひしめき合っているのは風俗店であった。ストリップ小屋の多いこと。しかも写真の如くおねえさんたちは白昼堂々店の前に来て下着姿で客寄せをやるのである。だからなんというか、ヨーロピアンな乙女風味と歌舞伎町と大音量の音楽(昼はクラブミュージック、夜は生のジャズが店から爆音で聞こえてくる)、それに小便的異臭を足すとFrench Quaterのイメージに近い。東京で一番好きな街は上野というわたしにはなんとなくこれが懐かしかった。

とはいえFrench Quarterはほんとうに小さな一画だし、酒の飲めない我々乙女はそんなにナイトライフをどっぷり堪能するわけにもいかない(なにしろ一泊二日だし)。そんなわけでStreet Carに乗ってGarden Districtという高級住宅街でごはんを食べることにする。New Orleans のStreet Car と言えば Tennessee Williams の Street Car Named Desire で、昔は確かにDesireという終着駅があったそうで「欲望という名の列車」も存在したらしいが、残念ながら今はもうない。しかしまぁやはりStreet Carというのは趣のあるもので、窓際の席に窓ガラスがないので窓際に座るとLouisianaの湿気で大きく育った街路樹がばさばさ顔に当たったりもするが、生温い風が気持ちいい。Garden District の邸宅は(Baton Rougeにも実はたくさんあるのだけれど)Plantation様式というのか、とにかくでかくてヨーロピアンでほんとに荘園領主っぽい。その名もCommander's Palaceというレストランでランチをしたのだが、中は白人のマダムでいっぱいだった。Louisianaは黒人人口が多く、Baton Rougeも人口の約半数が黒人なので、こんなにたくさんの白人を見るのは久しぶりだ。ごはんはすこぶるうまかった(New Orleansのごはんは何でもおいしいのだけれど)が、店の女主人が各テーブルを回ってにこやかに歓談するというのに、われわれアジア人のテーブルでは「ごきげんよう」くらいで終わったので、ああこれが噂のあれなのか、と妙にしみじみしてしまった。Baton Rougeではあまりにみんな優しいからすっかり忘れていたよ。

そんなDeep South体験までさせてもらった後に、我々は夕暮れのSwamp tourに繰り出した。これがもうほんとにすばらしかった。長くなったのでいい加減止めるが、また是非行きたいとほんとうに思う。ボートでswamp と呼ばれる湖と沼の間くらいのジャングル的湿地帯を巡るのだが、その風景が美しい。Gator(Alligatorの略)とよばれる鰐も売り物のひとつらしく、ガイドのひとり(仕事を始めて2年目)が調子に乗って口にソーセージをくわえて鰐をジャンプさせようとしていたのを見て、我々のガイド(彼はCajanの子孫なのだった)は冷静に、ああいう奴、小学校の教室にひとりはいるよね、みたいなテンションだった。

さんざん遊んで、Preservation Hall でジャズも聞き、名残惜しいがそろそろ帰ろう、と夜10時、ホテルの駐車場に歩いて戻るときに、サンダーストームが来た。稲妻が落ちまくり、雷が轟く。これまでに見たことのない量の雨に呆然としながらも、止む気配がないので夜の雨の中を友人と二人で走る。ずぶぬれになってホテルのトイレの乾燥機(ほら、手を乾かすやつ)で身につけたままのシルクのワンピースを乾かす友人の姿をわたしは一生忘れないだろう。New Orleansよ、必ずまた来るからね。See you later alligator, in a while crocodile!