お金貯めて三日泊まるのが夏休み
週刊誌読んでやって来れば数珠繋ぎ
冷めたスープ放り投げるように飲まされて
二段ベッドでもあたいの夏休み
Summer Vacation  あたいのために
Summer Vacation  夏 翻れ

—中島みゆき「あたいの夏休み」

2011年5月8日日曜日

Crawfish Boil

世界の至る所に土地土地の「創世記物語」みたいなものは民話として残っているのだけれど、Louisianaの場合、神ははじめに海を作り魚とshellfishを住まわせて、crawfishに海底の土を堀り上げて陸を作るように命じ、そこに我々の住む大地を作った、というのがある。ことほど左様にcrawfishはLouisiana精神の源である。

そんなわけで2月から6月くらいのLouisianaはcrawfish天国となる。crawfishというのはひらたく言えばザリガニのことなのだけど、Louisianaではこの季節、crawfish料理がかかせない。前述のPo'boyはもちろん、etoufeeというスパイシーなシチューみたいなものも人気があるのだけど、一番はやはりcrawfish boilで、昨日は英文科のcrawfish boil partyだった。最後の締め切りまであと一週間をきり、本当なら家で黙々とペーパー(残すところあと20ページ)を書いているべきなのだろうが、腹が減っては戦はできぬということでもちろん参加してきた。

ザリガニというと日本人なら誰しも幼少期に嗅いだあの匂いを思い出してあれ食べるのか、とうっとくるかもしれないけれど、どっこいこっちのcrawfishはくさくないのだった。いや、というかLouisiana料理特有の「なんでもスパイスと煮れば怖くない」的な精神で、boilの時も写真にうつっている麦茶のパックみたいな袋に入っている大量のcajun spiceとにんにく、レモンやその他もろもろの香味野菜と一緒に茹でるので、ザリガニの匂いの残る術もないということなのかもしれない。大釜に何百という生きたcrawfishを入れてじっくり茹でて、それをビニールのテーブルクロスを敷いた大きなテーブルにどかっと空ける。あとはみんなでひたすら黙々と立って食べる。まず頭をぽきっと折って、ちゅうちゅうとミソ部分を吸い、体の部分は海老みたいにして剥いて食す。味は海老と鶏肉の間みたいなのだけど、とにかくスパイスが効いていて、ああ、夏の夕暮れが目にしみる。crawfishと一緒に茹でたじゃがいもやトウモロコシ、おまけにガンボやレッドビーンズもある。ちなみにどれも作ったのはLouisiana出身の男性陣で、Louisianaには父さん料理みたいなのがあって、こういう屋外の料理は男に任せて女の人はゆっくり普段の疲れを癒すべし、というのがコンセプトらしいのだが、当たり前に我々は大学院生なわけで特に何の家事を家族のためにしているわけでもないので、いつもながらのサザンホスピタリティにひたすら頭がさがった。

帰ってまたペーパーを書くつもりだったのだが言うまでもなくビールの誘惑に逆らえず飲んでしまい、同様に酔った友人に担ぎ上げられてcrawfishの釜に落とされそうになるのに必死に抵抗したら食べ終わったcrawfishの殻の中に落ち、さんざんcrawfishのミソまみれになって家につくころには使い物にならなくなっていたのでそのままシャワーを浴びて寝てしまった。ほんとの夏休みまでカウントダウンがはじまった。さて、こんなことでいったいペーパーは仕上がるのか。とりあえず今日は髪の毛ふりみだしてがんばります。でもこうしてる間にもお気に入りのワンピースからミソの匂いがする。早く洗わなきゃ。