お金貯めて三日泊まるのが夏休み
週刊誌読んでやって来れば数珠繋ぎ
冷めたスープ放り投げるように飲まされて
二段ベッドでもあたいの夏休み
Summer Vacation  あたいのために
Summer Vacation  夏 翻れ

—中島みゆき「あたいの夏休み」

2010年7月31日土曜日

Nashville, Tennessee 2

前回のポストの続きである

さて、そのようにアイデンティティというものを常に問うこのアメリカ合衆国 当然と言えば当然の帰結として、この国はindividualismに貫かれている それはわたしも常識として知っており、そしてさらに大抵の外国人は、つまり日本人以外は、たいていそんな感じなんだろうなと思っていた 和をもって尊しとする、というのはごく日本的、せめて範囲を広げて東アジア的なものであって、それはほかの国にはない特徴なのだろう、と しかしけっこう驚きだったのは意外なほど多くの国においてこうしたcollectivismが共有されているということだった 「カルチャーショックと対峙するために」というようなレクチャーがあり、そのレクチャラー(Vanderbiltのカウンセラー)によれば、たとえばブラジル、ロシアといった国は相当程度collectivisticな感覚を有しており、しばしばアメリカ人とのコミュニケーション・スタイルの違いがこうした国から来た留学生のカルチャーショックからくる鬱を引き起こす事例が多いと言う 

そしてなるほど わたしがこのオリエンテーションで最も落ち着いて一緒にいられたのはこうした国のひとびとであった レクチャーの途中でコミュニケーション・スタイルの自己分析という心理テストみたいなものがあり、それに沿って4つのグループにわけられた我々はそれぞれ自分たちのコミュニケーション・スタイルのプレゼンテーションをやらされた そこでロシア人、ブラジル人、タイ人、台湾人、ノルウェイ人などからなるわたしたちのグループがやったのは、ただ黙って微笑み、プレゼン内容を書いた大きな紙を掲げるというもの そこに書かれた我々のキャッチフレーズは "Yes, we are quiet, but not dumb"  ほんとにそうなんだよ とほほ

どんどん長くなってしまったのでそろそろ終わりにするが、今回テネシーに来て驚いたのは Southern Hospitality というのがどうやらほんとに存在するらしいということだ 旅行で何度かアメリカには来ていたものの、訪問都市は北部に限られており、南部は初めてだったのだが南部、とにかく人がやけにあたたかい 空港での応対なんかもとにかく人なつこい Howdy, Sweetie, I like your T-shirt. みたいな乗りでとにかく話しかけてくる ちなみにこれは全米的なことかもしれないが、やっぱり自分で重たい荷物をもったりドアを開けたりする機会はほとんどない Laggage Claimではいつのまにか飛行機で隣に座っていたおじさんがわたしの荷物を持ち上げてカートに乗せてくれて、トランジットの飛行機のチェックインカウンターまで"escort"してくれたりする いったい何事だ こんなお姫様気分は初めてだ これからどうなるかわからないが、少なくとも出だしは大変ありがたかった 

もうひとつ、もういい加減にほんとに終わりにするが、Nashvilleは "Music City" として有名で、オリエンテーションではカントリー・ミュージックのライブにも行った それもけっこう良かったのだがなにより驚きかつ楽しかったのはLine Danceというものだ いわゆる「ラインダンス(フレンチカンカンみたいな)」とは全く違い、footloose というのに近いらしいのだけれど、クラブみたいなところで、しかし前方にはステージがあり、そこではバンドがカントリーとロックの間みたいな音楽を演奏している 舞台の前には四角いダンススペースがあって、そこをぐるりとテーブルが取り囲み、客はそこで飲んだり食べたりできる で、ダンススペースでなにをするかというと、ホットパンツにウェスタンブーツのお姉さんがインストラクターをしてくれるのだが、同じようにぴちぴちのブロンド少女(南部では驚くほどブロンドが多い)たちから初老の夫婦まで、みんなで同じ踊りを踊る これがけっこう難しいのだがやると盆踊りみたいで楽しいのだった 参考までにこんな感じ

http://www.vidoemo.com/yvideo.php?good-time-line-dance-country-clip-alan-jackson=&i=aUZsM2c0cWuRpYWl6MFk

南部の文化なのだかテネシーの文化なのだかわからないが、妙にしみじみと良かった 

こんなところで今回はおしまいにするが、そうだな、いい4日間だった、と素直に言えるようになったのは、このオリエンテーションでジャパニーズ・シニカル文学部ネスを無理矢理デトックスされたからかもしれない 良くも悪くも(というのはシニカルの最後の抵抗)